日本人のクリエイターをインタビューした本
「発想の種 IMAGINE 発見編」を読みました。この本を読もうとしたきっかけは、以前読んだデンマークに学ぶ発想力の鍛え方という本がきっかけです。その本は、デンマークのクリエイティブな人物にインタビューをすることで、クリエイティビティを分析しようとしたものでした。しかし、その本の登場人物はデンマーク人しかいなかったので、日本人のインタビュー本はないかと思い、見つけたのが本書でした。
日本人だとなじみがあって面白いものを生み出したクリエイターのインタビューも載っていました。例えば、ユニクロとビックカメラを融合した「ビックロ」をプロデュースした人や、「くまモン」をプロデュースした人。そういった人たちのお話が聞けました。
評価:☆☆☆
さて、評価としては☆3つくらいとなります。というのも、やや内容が物足りない気がしたからです。これはインタビューしたクリエイターがつまらないわけではありません。単純に文字数が足りないと思いました。もっと文字数を増やせば深みがあり読み応えのある本になっていたと思います。ただ、内容がダメというわけではないので、☆3くらいの評価となります。
若者文化の分析は参考になった
個人的に気になった点をあげます。若者文化について増田セバスチャンというきゃりーぱみゅぱみゅのミュージックビデオに携わった方がこんなことを言っていました。
『若い世代のカルチャーというのは、対立構造にこそ存在意義があるんです。
つまり、メジャーに対してのアンチテーゼこそが若者の存在意義。
だから、いまKawaiiカルチャーが世の中で広がっているとすれば、それに対して「わたしはそうじゃなくてこう」というのがドンドン出てきていると思います。』
なかなか鋭い指摘ではないでしょうか。僕は若者文化について深く考えたことがなかったので、この指摘はやや意外でもありました。けど、確かに東京を中心にKawaii文化とは違った新しいモノが生まれる可能性はありますね。Kawaii文化=若者文化ではなく、その先を見つめなければいけないなと思いました。それこそが若さなんだと思います。
その他気になった言葉
小説家、デザイナー、ミュージシャンなどといった創造することを職業にしているクリエイターたちに共通することは、自分がやりたいと思ったことは必ず実行に移し、最後までやり遂げることです。
才能あるクリエイターであっても、よほどの天才でないかぎりは、やり遂げるには時間がかかるものなのです。そして、やり遂げたときに自分が変わったことに気が付きます。
この番組をはじめて分かったのは、ほとんどのクリエイターが劣等感を持ち、挫折を経験していることです。
クリエイターという職業は特殊なのかもしれませんが、彼らの生き方を見ていると、「欠点だらけの自分の個性とどう向き合って生きてくのか」という普遍的な問題への一つの答えを提示しているように感じます。
クリエイターのように自分の欠点を生かせる人と、劣等感を抱えたままネガティブに生きてしまう人とでは、どこに違いがあるのでしょうか。
二流のクリエイターはナルシストで、作品もいまひとつです。一方、一流のクリエイターはメタ認知ができてるので、でき上がった作品はひとりよがりではない鑑賞に耐えうるものになります。
デザインって感覚的だけど、プロセスはロジカルでないと、ブレてぬるい物になってしまう
極論ね、天才みたいな人はいないと思っていて。何らかの積み上げの上でしか、いい物はつくれないんじゃないかと思っているんです。
「あいつはもうダメだな」とか、「あいつ終わったな」とか思われるのが恥ずかしいから、みんな過去をコピーして結局は終わるんですよ。でも、ピカソだって変わり続けたから。
若い人に知ってほしいのは、メインストリームの仕事でなくても、一生懸命やればそこに何かがあるということ。
「行き当たりばったり」って聞くと、なんかネガティブな感じがしますけど。これに「力」という字を加えると、それが才能のように思えるんですよね。
うちのスタッフにも言っているのは、ブレていい、ブレるって素敵なことなんだと。
女性たちのコンプレックスに、発想の種がある
女性のコンプレックスって、10代から20代の間は、わりと外見のコンプレックスが主なんです。20代から30代になってくると、恋愛とか自分の内面に関わるコンプレックスが出てきて。そこにいろいろな発想の種があるんです。
いつか慣れてきて、世の中はこんなものだろうと達観して「なんで?」って言わなくなるときが怖いですね。
広告って、メモ帳サイズに書いたことくらいしか伝えられない
まず「ん?」と思わないと「あ!」は生まれない。
アイデアは遠い世界で探さなきゃいけない
香水ボトルのプロジェクトをするときに、香水ボトルの本を見るとか絶対ない。
「繋がり」ってすごくいい言葉ですけど、強くなりすぎると「しがらみ」って言葉になったりして、なかなか新しいことができないことに、なりかねないんですよ。
イタリア人ってあんまり仕事が好きじゃないんですよね。だけど、生活を楽しむためのクリエイティビティ能力は非常に高い。
既存の価値観に付き合わなくてもユニークであれば何とかなるみたいな感覚が、今に続いている気がしますね。
デザイナーにとって難しいことは、自分に100%正直であること。
優れたデザイナーはアイデアを伝えなくてはならないけど、それ以上に人の話に耳を傾けなくてはいけないんだ。
どんな人でも独創的だと思うけれど、それを表現して、外に打ち出していくためにはトレーニングが不可欠なんだ。
まずはあらゆる素材で試して、今度はいろんなカタチを試していく。ある程度のカタチになるまで続けると、ようやく自分のアイデアが意味を成す物になっていく。
今の時代、付加価値をつけることって、ドットとドットを結ぶことですよね。難しいと言われていることって、実は一番難しくないことかもしれない。
違和感ってクリエイティブの源泉になりますよね。
終わりに
クリエイティブの第一線で活躍しているだけあって、印象的な言葉がいくつかあったと改めてと思いました。